Movement(移動)
絶好の日和の今日、待ち合わせ場所である○○駅に行くと既に仲間でありライバルである、カピクロがいた。 二人でこれからのレースへの期待と不安を語り合う中、アッキートランポにて熊五郎&横綱が現れた。さあ、白馬までの長い道程の出発だ。
しかし横綱は免停をくらっており、運転不可能でナビのみだ。そこでしぶしぶ熊五郎が運転となった。 俺は早速お眠モードに入る。熊五郎よ運転頑張ってねと思いつつ 目が覚めると白馬だった。白馬も意外に近いな(寝てたからね)
今回の宿は前回も利用した「やまわ館」だ。おばちゃんが親切でかつ、 飯がうまかったので 今回も早速選択した次第だ。 明日に備えて、今日は早く寝る。
Preparation(準備)
さあレースの朝がやってきた。手早く昨日購入しておいた朝食を食べつつレース会場に出発する。到着したらとりあえずマシンをおろして、整備・調整に入る。
うちのマシンはエアクリーナ、サスペンションがコスによる調整済みなので、タイヤ空気圧を調整する。通常より少し少な目のトラクション重視の柔らかセッティングとする。
毎度々発生するアクシデントにより、付けるたび無くなっていたサイドゼッケンは今回特に取り付けず、シートカウルに小さなゼッケンを張り付けた。これならちょっと見にくいけど少々のアクシデントにも耐えるはずだ。
これで今回はとれてしまったサイドゼッケンでマーシャルの小僧に応援されるようなことはないであろう。

次はチェーンを確認する。テンションはいい感じになっているので、コスより指示されたチェーンオイルをまんべんなく吹き付けておく。
チェーンといえばと思いチームブラッキーズの様子を見ると、チェーンの緩み調整の後チェーンオイルをしこたま拭きかけている。前回のレースの汚れもチェーンに残っているということで、チェーンオイルを吹き付けて流し落とすらしい。
親のかたきのように吹き付けている。一缶全て使い切る勢いだ。吹き付けると白くなるチェーンオイルのため、既にブラッキーズのチェーンはホワイトチェーンになっていた。 さすがチェーンが鬼門であるブラッキーズは、チェーンメンテに対して余念がない。
さてチーム極楽とんぼのマシンだが、タイヤもいくつかブロックがとれてしまったところもあるが、特に問題なし。エンジンも調子よく回っている。全て万全のようだ。あとはゆっくり車検を待とう。
受付で、チームメンバーの変更を告げて更新してもらう。今回は悪鬼およびコスが急遽キャンセルとなったので、それぞれの相方の横綱とヨシがチームを組むことになった。突然の即席チームだったが、チーム名はあっさり 「極楽とんぼ」と確定した。確か熊五郎が命名したように思う。横綱は憤慨していたようだが、俺は妙に納得していた。

車検では特に指摘はなく通過した。今回は人間による周回カウントに加え電子機器による周回のカウントも行うらしくID無線機の取り付けが義務づけられた。
それをハンドル下の位置に取り付けた後、バイク置き場にマシンを置く。これで後はスタートを待つだけである。だんだん緊張が高まっていくのを感じていた。
Start of an hour race(1Hレーススタート)
まずは1Hレースからスタートした。これが終わると我らの出場する3H耐久だ。 今回は急遽臨時チームでの出場になり、当初の予定では2番手スタートの予定が今回スタータをつとめることになった。
予期しない突然のスタータと、新規の臨時チームへのプレッシャーで、前回以上に緊張して、1Hレースの待ち時間中にすでに大興奮状態になっていた。
しかもあらかじめコースを下見したら前回も大渋滞を引き起こしたハーフパイプが、前回以上の難しさで登場していた。しかし、1Hレースでも渋滞は発生しておらず、みんな結構簡単そうに駆け抜けている。 とはいえ俺に通過できるのだろうかという不安は消えず、緊張度は増す一方だった。
そのうち1Hレースが終了した。とうとうスタートの時がやってくる。既に俺の身体はオーバーヒート気味で、 レースに出る前に終了してしまうんじゃないかという状態になっていた。がんばれ!ヨシ!

‘F’(エフ)
今回は耐久レース以外にも各種イベントが準備されていたようなのだが、都合によりほとんど中止になっていた。 しかし、目玉である’F'(エフ)のライブイベントは行われるようだ。

‘F'(エフ)とは、アメリカより逆輸入のセクシーダンスユニットらしく、とても期待がもてる。どうやら今日のレース終了後にライブを行うらしい。レース後にこのようなイベントがあると、耐久レースの疲れも吹き飛ぶというものだ。
加えてモンゴルマンというやつも登場する。 TOKIOの番組に出ているらしく、そこそこ有名らしいが、俺は全く知らない。 そして俺にとってはどうでもいいことだ。とりあえずはFに期待だ。
1Hレース中にFのショートライブが開始された。3人組が歌って踊るのだが、歌は下手で踊りもいまいち。普通に日本語で歌う彼女らは、なぜアメリカデビューなのか理解できない。そして最大の売りであるはずのセクシーさも今ひとつな踊りによってかき消されてしまい、またレース主催のキャンギャルDirtSprtsGalsが水着だったせいで、そちらにばかり目がいき、 Fはほぼ眼中からはずれてしまった。
どうやらこれは俺だけではないらしく、歌うFに対して近くまで行って見ようというものはほとんどいなかった。 期待が大きかっただけに受けたショックは計り知れないものがあった。そのうちショートライブは終了した。すこし重苦しい空気だけが残った…
Starting of three hours race(3時間耐久開始)
とうとうこの時がやってきた。三時間耐久のスタートだ。 スタータの俺はバイクに跨り発進の時を待つ。 相棒のキャンセルや、即席チーム、スタータの変更や今年のこのコースへの不安などで、俺の心臓は臨界点にまで達していた。そんな俺の心情を知ってか知らずかにこやかに見送ってくれている。何としても横綱にリレーせねばとの思いを胸に秘め、 ローリングスタートに飛び出す。

レース開始の合図の日の丸の旗があるまで、前車について行く。 しかし、メインストリート頂上付近でバランスを崩し早くもスタック! 早速最後尾(ビリ)になってしまった。何ともさい先悪いスタートだ。 山を登ると日の丸の旗を振っており、ここからレーススタートだ。当然ビリスタートとなった。

まず1周目はコースの様子を確認しながら走る。 前回に比べコース全長は短くなっているが、難易度は上がっているように思う。 全体にガレ場というのは前回と同じだが、ダウンヒル、ヒルクライムともに、斜面に対して斜めにコースが造られており、うまく走破するにはかなりのテクニックが必要だ。
当然俺にそんな技量はなく、コース設計者の思惑通り転んでしまう。長い登りを上っていくと、そこには残雪がありびっくり! さすがにまだ誰もここには突っ込んでいないようだ。
そこからは岩場の下りで、でかいむき出しの岩にハンドルを取られて大変だ。岩がとがっていて変に転ぶとバイクが壊れそうだ。そして人間も痛そうだ。
これをクリアすると平らな林間を抜けて恐怖のハーフパイプだ。ハーフパイプ前で一旦停止し、気合いを入れた後一気に下ると、勢いでそのまま上り何とかクリアできた。案外あっけなく終わった。恐れていた割には意外に楽だった。
何とか1周目をクリアし2周目に突入する。しかしここでアクシデントが起こってしまった。 下りの途中で転んでしまったのだが、そのときバイクがのしかかり、マフラーが足に当たって、火傷してしまった。しかも、火傷した部分は膝の裏側の柔らかい部分である。
モトパンはビニール部が熔け、皮膚は真っ白に変色している。ものすごい痛い。すぐさま脱出して、痛みをこらえていると、ちょうど仲間のしおじ氏が通りかかり 「大丈夫?」と声をかけてくれた。
その言葉で気合いを入れ直し、 大丈夫ですと答えてマシンを起こした後、痛みをこらえて何とかピットまでたどり着いた。とりあえず横綱に交代して、休憩に入る。
Change rider and resting(交代そして休憩)
いきなりのアクシデントだったが、何とか交代までこぎつけ、休憩に入る。火傷の箇所を見てみると、モトパンは熔けて大きな穴になっている。そして、火傷はなんだか気持ち悪いことになっていた。
とりあえず水をかけて、前回も活躍したマキロンを吹き付けて消毒しておく。処置しにくい場所だけに、大変だ。 しかし興奮しているせいか、見た目よりも痛みはひどくない。
すでにピットに戻っていたカピクロとコースについて話す。やつもずいぶん転んだらしい。水分補給して落ち着きを取り戻した後レース状況を確認する。横綱は快調にとばしている。 さすがだ。どうやら4周走るようだ。ゆっくり休める。
やはり白馬を甘く見ては行けないようだ。前回完走したからといって、 調子に乗るといたいしっぺ返しを食らってしまう。気を引き締めて行こう。

Next ride(再出発)
横綱が戻ってきた。さあ交代だ。十分休養をとったので、意気揚々と出発した。コースはたくさんのバイクが走ったせいで、コースにはラインが出来ていた。そのラインの轍をトレースしながら走るとわりと楽に走れたので、ライン沿いに走る。
しかし、難所はやはり難しく、ちょっとのミスですぐ転んだ。 一度転ぶと一気に体力を奪われるので、大変だ。転んだら、とりあえず落ち着いて、それからマシンを引き起こし、また落ち着いてから再出発する。休憩タイムがたくさんはいるので、ずいぶん再出発まで時間がかかってしまう。
今回も前回同様とてもいい天気になった。おかげでこれまた前回同様砂埃の嵐になった。 走っていると口の中に大量の砂埃が入ってくる。しかしそんなことはお構いなしに、いや気にすることも出来ずに、走った。
何とか2周目の最後が近づき、ハーフパイプに来たら、前のバイクがハーフパイプの登りで竿立ちになり転んだ。怖えーとおもいつつ抜き去って行ったのだが、 どうやらそれはカピクロだったようだ。(余裕がなく俺は気づかなかった)ハーフパイプも意外に簡単と思っていたが、気を抜くとこうなるということを、 カピクロは身をもって教えてくれた。
なんとか2周走りピットまでたどり着いた。もうかなり体力を削られた。 しかし時間はまだ半分経過しただけだ。まだまだ頑張らねば。 とりあえず、横綱に託して、休憩に入る。

Next running But …(交代。しかし…)
横綱は爆走している。特に転ぶことなく走っているようだ。 さすがだと感心する。今回俺の相棒が出場できなくなり、俺一人で走ろうと思っていたのだが、はっきり言ってそれは無謀だった。しかし今回横綱がパートナーになってくれて、 とても助かった。そんな横綱に感謝しつつ、交代する。
だいぶ疲れがたまってきたが、頑張るぞと張り切って出発する。 コースはまた変化していて、轍(わだち)がさらに掘られ、石がむき出している。 これは走りにくくなってしまった、と困りつつがんばって駆け抜ける。
途中頂上付近でカピクロに出会った。山頂付近の一番いいライン上で転んでいた。 おかげで渋滞が発生している。だが原因はぶつけられたかららしい。しかしおれも転んでしまった。やつとは違うラインを走っていたが、 走りにくい斜面のラインだった。
その斜面にバイクが転んでしまい、 起こすのが面倒だった。そして、起こして再出発しようとしたが、 坂のためうまくスタートできない。 コースに戻りたいのだが、斜面の関係で、バイクの向きとは違う斜めの方向に滑って進んでしまう。 脱出してコースに戻ろうとすればするほど、違う方にバイクは滑っていき、 だんだんやばい方に進んでいた。
なんだかあり地獄に捕まったようだ。 おれは焦りもあって、汗だくになりながら、コース復帰を目指した。 何とか最後ぎりぎりのところで、コースに戻れた。ものすごく苦労した。もう少しへまをしていれば崖に行ってしまい、大変なことになるところだった。
ふとカピクロの方をみてみるとまだ何か往生しているようだった。 あとで聞いてみると、どうやらチェーンが外れたらしい。 相変わらずチェーンに泣かされてしまったようだ。 しかし戻ってこれたため、リタイヤにならずよかった。
俺は最後の体力を振り絞って、ピットを目指した。 すでに残り体力は少なく、意識は朦朧としていたが、惰性でピットまでたどり着き横綱に交代することが出来た。

Accident & Happy end(アクシデント。そして…)
ぼろぼろの体力で横綱に交代を果たした。1周での交代だったが、スタックしていたので、時間はずいぶん経っていた。時間的にはもう終了が間近だ。
横綱のペースなら3~4周走る頃に終了になるはずだ。俺は役目を終え、とりあえず休む。 横綱がチェッカーを受けてくれれば、完走を果たすことが出来る。 最後にアクシデントのないことを願いつつ、戦況を見守る。
とうとう終了の時がやってきた。そう苦難の3時間が経過したのだ。 ゴールではチェッカーフラッグが振られ、トップガンの曲が流れ始めた。ちょっと前に横綱がピット前を通り過ぎた後だから、ゴールするにはもう少し 時間がかかるだろう。最後のシーンを写真に収めるべく、カメラを持参し、そろそろ戻りそうな時間に、ゴールへと向かう。
しかし、横綱はなかなか姿を現さない。ゴールは集計や、無線機の取り外しの関係もあって渋滞になっている。どのライダーもほこりにまみれて汚れまくっているが、 そのメットのなかはどれも達成感一杯の笑顔だ。
そんななか、横綱の姿が見えた。その数台後ろには熊五郎の姿もある。 そして、チェッカーを受けた。とても長く、そして短かい3時間だった。

無線機をはずされ、ピットに横綱を迎え入れ、喜びを分かち合おうとしたら、実は最後の周回は大変なことになっていた。
いままでずっと快調だったはずの横綱がクラッシュしたらしく、お約束であるカタパルト発進をしてしまったらしい。横綱を射出するパワーとはどんなものかと驚いたが、その痕跡が、ハンドルに残っていた。
ハンドルガードも付けてあるので強度はかなりのはずなのに、ハンドルガードはちぎれ、あの堅いはずのハンドルが大きくひん曲がっていた。 ダメージを受けたのが左のクラッチ側だったから良かったものの、右のアクセル側だったら、走行不能でヘタするとリタイヤだった。 全く危ないところだった。どうやら、このセローにはアクシデントは必須の様だ。

しかし、そんな出来事が起こりつつも完走を果たすことが出来て、とてもうれしい。前回の佐野坂ではリタイヤしてしまったブラッキーズも今回は何とか完走を果たすことが出来て本当に良かった。そして、一人で走ったしおじさんも、無事完走を果たした。
僕らはみんなで喜び、そしてお互いの健闘をたたえあった。

Result of race (レースの後に)
レースが終了した。終わってみると、レース開始からのいろんな出来事が思い出される。レースの終わったピットで、宿に戻る車内で、そして宿に帰ってからもあのときがどうだった、こんなやつがいた、ひどい目にあったなどと、長い間みんなでレースの内容を語り合っていた。

今回はわずか2チームだけの出場となったのだが、どちらも完走する事が出来、本当に良かった。しかし、レース前に契約された、対決がある。どっちのチームが速いかだ。
今回の周回数は下記の様になっており、チーム極楽とんぼがチームブラッキーズを上回った。誰のおかげかといえば、横綱の走破力が際だっていた。そして、誰のせいかといえば、カピクロのアクシデント発生率の高さが光っていたようだ。
ただし、要因はいくつもあり、ブラッキーズは200ccのバイク、かたや極楽は225ccのうえセル付き。また、極楽チームは急に決まった臨時チーム、しかしブラッキーズはすでに数回目の出場チーム。そして、俺をのぞくメンツは少し前に富士のレースに出場していて レース感覚はだいぶ身に付いている。
いろんな要素が有るとは思うが、全員自分の全力を出しきって、完走したように思う。結果はどうあれいいじゃないか。とはいえ約束は約束である。景品である夕飯時のビールを俺と横綱は豪快に飲み干した。

こうして、’99初夏の白馬佐野坂耐久レースは幕を閉じた。 もうこんな所走りたくないという気持ちと、またここに来て頑張るぞという気持ちとを残して…
リザルト
チーム名 | ライダー | 周回数 | 全周回数 |
---|---|---|---|
極楽とんぼ | 横綱 | 11周 | 16周 |
ヨシ | 5周 | ||
ブラッキーズ | 熊五郎 | 10周 | 14周 |
カピクロッシ | 4周 |